山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

PKディック/ミステリーゾーン

PKDのSF長編私的ベスト10

読み終わると積んでいったのだけれど、人にオススメできる順にしていった。 その結果がこれです。発表します。 『火星のタイムスリップ』 『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 『虚空の眼』 『流れよ我が涙、と…

PKD『怒りの神』

ディックとロジャー・セラズニイの共作。 セラズニイが嫌いなわけではないが、あまりにもちぐはぐだ。セラズニイが描く世界はリリカルに高揚していく世界で、ディックの持ち味は陰鬱として神経をチクチク、カサカサさせる世界。それが補完し合ってすばらしい…

PKD『虚空の眼』

この初期長編は、ハヤカワ→サンリオ→創元と3社から発売されたというSFとしての3冠を達成している本です。 おもしろい。 読ませます。 エンタテインメントとしてまずはよくできている。 ある事故に遭遇した人たちが、順繰りにそのうちの誰かひとりの創り出…

PKD『いたずらの問題』

以前、「何でもいいからディックの小説をひとつ映画化してもいいってなったら何にするか」なんてことを考えたさいに、私は『いたずらの問題』がいいかも、と思ったことがある。 書かれたのは1956年。ディックのごく初期の長編だ。 ユーモアの許されない、硬…

PKD『タイタンのゲーム・プレーヤー』

なぜか妙にテンポがよくてエンタメしている。 100ページちょい前あたりで殺人事件が起こり、SFミステリーの様相になる。 そこにエスパー集団vsタイタン星人の超能力バトルが盛り込まれてきたりして、ディック得意の自殺衝動、シミュラクラ(擬人体)、ここは…

PKD『宇宙の操り人形』

主人公が故郷の町を訪問してみると、自分の記憶とまったく異なることに気づく。しかも自分がその町で生きていた痕跡も発見できない。記憶がすり替えられたのか? まるで「ミステリーゾーン」のような出だし。かつ、ディックお得意の世界。 安直なオチに持っ…

PKD『偶然世界』

スマン、80ページぐらいで挫折した。 ディック本人が認めているように『非Aの世界』などのSF作家、ヴァン・ヴォート(発音的にヴォークトは誤りなのでこう書きます)の影響が強い作品。 ヴァン・ヴォートだけに限った作風ではないけれど、50年代アメリカ産SF…

PKD『高い城の男』

ヒューゴー賞受賞作であるからディックの出世作になるのだろう。 第二次世界大戦でドイツ、日本、イタリアが勝った世界での、例によってサンフランシスコを舞台にした話。 あまりSF的なギミックは繰り出されない。 複数の登場人物による話で、心理描写なども…

PKD『逆まわりの世界』

こりゃつまらんワ。 時間が逆に流れてしまうようになった世界という設定が、すごくムリがある。 ハードSF的に強引に説明をしてしまって、その強引さが魅力であるようなシロモノはディックには書けないだろうし、なにかつじつま合わせのような描写が、異物が…

PKD『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

ごぞんじ映画『ブレードランナー』の原作。 なので読んでいてついつい映画のイメージが混入してくるので困る。 主人公の容姿があまり描写されないので、ついハリソン・フォードを当てはめて想像しているのだけれど、260ページで「毛のないすべすべした丸顔の…

PKD『ユービック』

これもけっこう評価の高い作品だけれど、なんとなくディックっぽくないんですよ。 ヘンな言い方だけれど、ディックがお手本としたヴァン・ボートの作品に近い感触。主人公が無個性で、しかも活躍してしまう。 超能力者の組織があり、その能力を発揮させない…

ミステリーゾーン #47

先週からAXNで放送がまた始まったミステリーゾーンだけれど、#1からではなくて#45からスタート。 で、この#47は私のツボのど真ん中を突いてくれる内容でした。 深夜の老人ホームの庭で缶けりをして遊ぶ少年少女。それらはみな、この老人ホームに収容され、死…

PKD『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』

どこでいつ見たかは記憶にないけれど、ディックの長編人気投票で、この『パーマー・エイルドリッチ~』が一位になっていたのを見た記憶がある。 たしかによくできている。ディックの最大の魅力である「現実崩壊とそこからの回復」が、ほどよく物語にはまって…

PKD『アルファ系衛星の氏族たち』

精神病院としてひとつの惑星を使っていたのだが、ずっと放置しているあいだに、精神病のタイプごとにカースト制度のように分かれた社会的集団ができてしまった、という設定。 ディックには珍しく、ちょいとドタバタ調の展開がある。なので、主人公が唐突に自…

ミステリーゾーン#94

ミステリーゾーンはこの第94話で最終回。さいごの2/3ほどを見たわけだが、前半はまたの再放送に期待しよう。 そもそもディックから始まって、50年代のアメリカSF最盛期の視覚的表現を観たかったわけだけれど、SFなのは2割か3割ぐらいで、主流なのは摩訶不思…

PKD『シミュラクラ』

登場人物も多ければ投入されるSFギミックもテンコ盛りという作品。 もちろん整合性は無視されている。ほとんどのことは説明されず、ラストも狙いでなしにぶった切りされている感じ。 だからストーリーを説明してもしょうがないので、記憶に残っているところ…

PKD『最後から二番目の真実』

ずいぶんと読み終えるのに時間がかかった。 これは、翻訳がちとよろしくない。サンリオSF文庫ってのは、ラインナップは凄いものもあるけれど翻訳のマズさに関しては当時からあれこれ言われていたものだ。 それはともかく、核戦争で地中に巨大タンクをつくっ…

ミステリーゾーン#83

見知らぬ部屋で目覚める若い夫婦。 昨夜の記憶は帰宅途中で途切れている。その家の人を探すが、誰もいないようだ。 電話を借りようとするが、電話には線がつながっていない。引き出しを開けようとすると、表の板だけが取れてしまう。ロケセットのような家な…

PKD『あなたを合成します』

これはPKDのなかでもオススメできない方だな。 シミュラクラム(擬人体)をつくる話が、いつの間にか精神を病んだ若い女に恋した主人公が、まるで伝染するかのように精神を破綻させる話にすり替わっていく。 そこに物語的なダイナミズムがあればいいのだけれ…

ミステリーゾーン#80

地球人そっくりの宇宙人が住宅地に住んでいる。彼らの目的は地球人類を抹殺して植民地にすること。 というありきたりな設定。 添付画像は、その宇宙人(なんと皮ジャン)たちが司令部と交信しているところ。画像モニターが丸っこいのがなんともこの時期のSF…

ヒッピー~ラブ&ピースの世界~@ヒストリーch

私はヒッピーの世代ではなくパンクの世代なので、ヒッピーと言われても、アタマのなかにいくつかの象徴的な人やモノや表現ブツがごろごろと浮上するだけで、ハートの方に何かがこみあげてくることはない。 しかしサンフランシスコに住んでいたPKDにとっては…

PKD『ブラッドマネー博士』

ディックっぽくないSF長編。やや長めでサンリオ文庫で400ページ。 登場人物がけっこう多い点、それから現実崩壊シーンがないという点がディックらしくない。 水爆によって荒廃した近未来のアメリカが舞台。 田舎でコミューン的に暮らす描写がじっくりと続く…

ミステリーゾーン#69

見ることが習慣化してきたこともあり、PKDとミステリーゾーンをひとつのカテゴリにした。 さてこの#69。設定が現在読んでいるPKD『ブラッドマネー博士』にそっくりだ。 核戦争後のアメリカの田舎町。生き残った人々が細々と暮らしている。大地は汚染されてい…

PKD『流れよ我が涙、と警官は言った』

不思議な透明感をまといながら、するすると物語が進む。ちょっと不思議な雰囲気の長編だ。 物語の結構の破綻はある。だいたい、途中から誰が主人公だかわからなくなる。 スタート時の主人公は、歌手で、テレビキャスターでもある中年男。世の中に広く知れ渡…

PKD『時は乱れて』

新聞の懸賞クイズを解くことを生業にしている主人公が、そこにはないはずの「電気をつけるためのひも」を暗闇で探したことから、いま、自分がいる現実へ疑いを抱く。そうして、この街を出てみることにするのだが……。 というふうに、比較的ストレートに進む長…

AXN「ミステリーゾーン」#64

ディックを読み進みながら「そういえば子どもの頃に見てた『ミステリーゾーン』って番組は、ディック的だったよなぁ」と思い出したのだった。スカパーで調べてみると、ちょうどAXNというチャンネルで放送しているではないか。このチャンネルは「よくばりパッ…

PKD『火星のタイム・スリップ』

すっかりラストシーンを忘れていた。電車のなかで読み終わってしまったので、落涙しているのを必死でごまかす。 物語の破綻が少なく、現実崩壊への入りかたの描写もよくできている。やはり他人にディック入門にオススメするのはこれがいい。

PKD『ライズ民間警察機構』

これは創元文庫。サンリオSF文庫で出たときは『テレポートされざる者』というタイトルだった。ディックの死後、改稿された原稿が発見されたためにタイトルを変更して出版されたものらしい。 改稿されたものの、つじつまの合わない部分があったり、結果的に説…

PKD『去年を待ちながら』

いま、この記事のタイトルを書こうとして、つい『さあ、去年を待とう』とタイプしてしまった。この小説は、ながらくサンリオSF文庫でそのタイトルで「近刊」を予告されていたので、そちらの方が脳に刷り込まれているため。 創元文庫110ページより。 「きみに…

北朝鮮の架空の街はディック的

ナショナルジオグラフィックチャンネルにて先月放送した「潜入!北朝鮮」という番組を録画したものをやっと見る。 これはネパールの眼科医に付き添って、アメリカ人ジャーナリストがカメラとともに入って撮ってきた映像が中心。 なかで、韓国との国境沿いに…