PKD『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
ごぞんじ映画『ブレードランナー』の原作。
なので読んでいてついつい映画のイメージが混入してくるので困る。
主人公の容姿があまり描写されないので、ついハリソン・フォードを当てはめて想像しているのだけれど、260ページで「毛のないすべすべした丸顔の容貌は、役所の事務員を思わせた」との描写があって愕然とする。同じようにヒロイン、レイチェルにしても、映画のイメージが強いのだけれど、顔が浅黒いということをはじめとする描写に出会うと、かなり映画とは異なる容姿だということがわかる。
それはともかく、ディックの小説の主人公としては、結果的にアンドロイドを6体も始末するわけだし、とても行動的な主人公だ。
現実崩壊としてとてもユニークなシーンである「サンフランシスコ警察が2つある」シーンは、映画には存在しない。また、ラストも異なる。マーサー教という宗教の存在も重要なのだけれど、これまた映画には登場しない。これでは骨抜きもいいところだ。ディックは映画のラッシュは見たそうだけれど、がっかりしたのだろうか、それとも「こんなもんでしょ」と思っただろうか。
再々読してみて、ラストシーンが印象に残った。これまで再読してきたディックの長編のなかでは、もっとも無惨な感じを受けるラストシーンだ。