山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

PKD『虚空の眼』


この初期長編は、ハヤカワ→サンリオ→創元と3社から発売されたというSFとしての3冠を達成している本です。
おもしろい。
読ませます。
エンタテインメントとしてまずはよくできている。
ある事故に遭遇した人たちが、順繰りにそのうちの誰かひとりの創り出した世界に放り込まれるというプロットなので、あとで「これSFか?」とは思うのだけれど、それらの個人的妄想が具現化したようないびつな世界の描写が抜群におもしろい。
これ、いまのCG全盛の現代でこそ映画化してほしいもんです。CGの嘘くささで描画するのにふさわしい、ありえないような、漫画チックな出来事が続出してくれます。
これもベスト5圏内に入りそうです。
ところで表紙の絵はサンリオの『聖なる侵入』などでも印象的な藤野一友の「レダのアレルギー」という絵。
これ、実物で見たことあるけれど、とてもデカい絵なのですよ。
このブログを読んでいる人には映像関係も多いので、書いておくけれど、藤野一友には自主製作映画があって、それは撮影を大林宣彦がおこなった『喰べた人』という作品。この映画を大林宣彦は「第一作」と称しているけれど、あんた撮影だろ! 撮影が、監督が死んでいるからと言ってぬけぬけと「実質的には私の第一作ですね」なんて言ってはいけないでしょう。だって、その後の大林作品を見て、さらに藤野一友の絵を見て、その上であらためて『喰べた人』を見れば、これはやはり藤野一友の監督作品だということがわかるもん。
私はこれまでいくつかの作品で撮影を担当してきたけれど、口が裂けても「あれは実際は自分が監督みたいなもんです」とは言えないですよ。撮影として参加したときはあくまでスタッフとして監督のために働き、しかしその代償としてその監督の持つエッセンスをいただいてきて自分の作品の糧にすればいいのです。大林監督は、その後の作品において『喰べた人』のグロテスクな感触を披露していません。
つい脱線してしまいました。ごめんなさいね。