PKD『逆まわりの世界』
こりゃつまらんワ。
時間が逆に流れてしまうようになった世界という設定が、すごくムリがある。
ハードSF的に強引に説明をしてしまって、その強引さが魅力であるようなシロモノはディックには書けないだろうし、なにかつじつま合わせのような描写が、異物が喉にひっかかるような不快さを醸し出す。
ある有力な宗教団体の創設者が、この時間逆転の世界で生き返る。それをめぐって起こるさまざまな駆け引きや闘争がこの小説のメイン。つまり日蓮上人が生き返ってしまって、それをめぐって創価学会と日蓮宗が争奪戦を繰り広げるような感じでしょうかね(あ、この話おもしろいかも)。
ラストはぶった切られるように終わってしまう。なにひとつ解決せずに、いやな感じで終わるのはディックっぽいと言えばそうなのだけれど、ま、ちょっとスッキリしないですよ。好みとしては『火星のタイムスリップ』『流れよ我が涙、と警官は言った』のような滂沱の落涙が欲しいです。