山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

PKD『去年を待ちながら』


いま、この記事のタイトルを書こうとして、つい『さあ、去年を待とう』とタイプしてしまった。この小説は、ながらくサンリオSF文庫でそのタイトルで「近刊」を予告されていたので、そちらの方が脳に刷り込まれているため。
創元文庫110ページより。

「きみにしろわたしにしろ、生きているあいだに犯した行為に対して本当に道徳的責任を取るとすれば、死んでしまうか、発狂するかのどちらかしかないだろうな。生物は自分の行為を理解できない構造になっているんだ。たとえばこれまでにわたしたちが路上でひき殺した動物や食用にしてきた動物を考えてみるがいい。子供の頃は、外のネズミを毒薬で殺すのがわたしの仕事だった。毒薬を飲んだ動物がどんなふうに死ぬか見たことがあるかな。それも一匹ではなく、毎月何十匹もが。なにも感じないんだ、悪いことをしたということも心の重荷になることもない。ありがたいことに記憶にも残らない、残りようがないーー残ると生きていけなくなるからなんだ。そうやって人類全体がなんとか生き延びているんだ」