山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

PKD『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』


どこでいつ見たかは記憶にないけれど、ディックの長編人気投票で、この『パーマー・エイルドリッチ~』が一位になっていたのを見た記憶がある。
たしかによくできている。ディックの最大の魅力である「現実崩壊とそこからの回復」が、ほどよく物語にはまっている。さらに、宗教的狂気を帯びたなにものかが、終始、物語によこしまな、不吉な感じを与えている。
しかし最後はぶった切りで、そこがじーんとさせてくれる『火星のタイムスリップ』とは異なるところ。涙好きな日本人は『火星のタイムスリップ』好きかもしれませんね。
でもキーンと脳髄直撃してくるような現実崩壊描写に関してはこの作品がトップかもしれない。
とにかく納得できるような世界に着地してくれない。落とし穴に落ちて、2歩か3歩でまた別の落とし穴に落ちるような感覚。そうこうしているうちに、もうどうでもよくなってきたりする快楽でしょうかね。