PKD『アルファ系衛星の氏族たち』
精神病院としてひとつの惑星を使っていたのだが、ずっと放置しているあいだに、精神病のタイプごとにカースト制度のように分かれた社会的集団ができてしまった、という設定。
ディックには珍しく、ちょいとドタバタ調の展開がある。なので、主人公が唐突に自殺しようとしても、それ以上の鬱に落いる前に事態が動いていく。
例によってアイデアがたくさん投入されているのだが、例によって娯楽小説としてそれがじゅうぶんに生かされることなくバタバタと終わる。
あのー。やはりこの人って、石川淳のような自動筆記方式で書いていたのでしょうね。自動筆記方式と書くと聞こえはいいけれど、ぶっちゃけ場当たり主義ってことだ。収集をつけるという気がなかったのか、できなかったのか。SF的なアイデアを思いついて、物語のなかに投入したけれど、それを物語のダイナミズムと有機的に結びつけるということがないのね。ないのね、というかできないのか。
いつも生煮え。だけど、生煮えで放り出されていることがひどく魅力的。
と、ホメたようだけれど、この小説に関しては、あわてて読む必要はないでしょうね。いずれ個人的な順位をつけちゃうつもりだけれど、これは真ん中より下あたりでしょう。