山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

PKD『ブラッドマネー博士』


ディックっぽくないSF長編。やや長めでサンリオ文庫で400ページ。
登場人物がけっこう多い点、それから現実崩壊シーンがないという点がディックらしくない。
水爆によって荒廃した近未来のアメリカが舞台。
田舎でコミューン的に暮らす描写がじっくりと続くのだが、なんとなくシマックっぽい。
最後の方で、少女の体内に寄生する超能力を持った弟と、アザラシ症だがおなじく超能力を持った男の対決になっていくのだけれど、そこらへんはなんだか妙にスタージョンっぽい。
また、主要な登場人物で、人工衛星に乗ったまま帰還するすべを失い、地上に向けてDJ放送をやっている男が出てくるけれど、これはなんとなくバラードっぽい。
かなり設定はおもしろいし、細かい小道具もおもしろい。なのになんとなくモタモタしているところは欠点。焦点を絞れないまま、物語が散漫になってしまった。惜しいなぁ。