山崎幹夫の各種センサー

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『もう夜』ノベルその6/うどんとエロと武田泰淳


以下は6月15,16,23日にラ・カメラ@下北沢で上映する新作短編映画『もうすぐ夜がやってくる』のノベライゼーションで、全部で10回の連載になる予定のものです。上映会のくわしい情報については、こちらの記事を参照ください。

酔っぱらったルカニはある時「うどんはエロいし、女もエロい。うどんを食う女はさらにエロい」と言い放ったそうです。ルカニの言い分を(酔っぱらいなのでクドいですが)もうちょっと聞いてみましょうか。
「そうじゃないうどんもあるけれど、うどんは見た目もエロいし、食ってもエロい。真っ白なうどんじゃなくて、エロいうどんは少しばかしクリーム色がかっていて、さらにちょっとだけ透き通っているような見た目なんだよ。弾力のある讃岐うどん全盛の昨今だけれど、伸びのある大阪うどんや博多うどんを口に入れて噛み締めてみろ。口のなかでむにゅぷるんとうどんが身悶えして口内の粘膜をアレしてくれるじゃないか。エロいっ。女の人のエロさってのはここで改めてうんぬんしないけれど、そのままでは少しもエロくない女の人であっても、無心にものを食べている姿はエロいと思うぞ。これはかの武田泰淳もそう書いている。『もの喰う女』という掌編小説だ。引用したいが今、持ってねえや。すまん。だからまとめるとこういうことになる。そのままではさしてエロさを感じさせない女が適切だな。そうね、あまり存在感をアピールしてないようなタイプの女がいいだろう。舞台役者さんみたいな、存在感オーラが出まくっているようなタイプと正反対な女がいい。それがうどんを、無心にね、ずずって啜るわけですよ。ずずずずずって。一気に啜り切れないでうどんが何センチか口の端っこからはみだしていたりして。それを最後にしゅぽって啜り込む。ああ、なんとまあ、エロき光景であることかな……」