山崎幹夫の各種センサー

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『もう夜』ノベルその5/超人ダライ・ラマ


以下は6月15,16,23日にラ・カメラ@下北沢で上映する新作短編映画『もうすぐ夜がやってくる』のノベライゼーションで、全部で10回の連載になる予定のものです。上映会のくわしい情報については、こちらの記事を参照ください。

ラブホでペウレプがコスプレ衣裳を着るのを待つあいだ、手持ち無沙汰でテレビニュースを見ていると、ダライ・ラマが何かしゃべっている。
ダライ・ラマは転生について何か語ったそうだ。転生って?
自分が死んだあと、転生した次のダライ・ラマ(15世)は、チベット以外の場所で生まれるかもしれないし、それは男ではなく女である可能性もある、とか何とか。
転生ねぇ。
前世とか来世ねぇ。
だめだな、自分には。転生を信じる素地に不足している。
でも、もし転生という物語を受け入れることができるなら、それが死の無残さを緩和するのかもしれない。
ああ、そうだとすると、よくイカレた人間が「自分は××の生まれ変わりだ」と妄想することって、ちっぽけな自分があくまでもちっぽけな自分でしかない無残さを緩和するための逃げ道なのかもしれないな。
俺には無理だが、とルカニは思う。
それはそうと、今のダライ・ラマが転生を認定されたときの試験のエピソードっておもしろいね。
前のダライ・ラマの持ち物と、そうではないけど見た目は立派なものを幼児に見せて、正しい方を手にするかどうかを試験したらしいけど、きっとこの子は「見た目しょぼいものが正解」と直感したんだろうな。
しかし、最後の「使っていた杖はどっち?」の試験では最初は間違った方を手にしたらしい。でもすぐに正解の杖に持ち替えたということは、この子は「場の空気を読む力」もすぐれていたんだろう。もともと政治家向きなんだろうね。だから男女共同参画の風潮にのっとって、転生も男女共同参画を唱えたんだろう。
それにしてもペウレプの着替えはまだ終わらないのか。