山崎幹夫の各種センサー

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ドラクエX (Wii) 提案門広場の教訓


プレイ時間は800時間を越えている。1日6時間も遊んでいるわけだ。なるほど、オンラインゲームが廃人を量産すると言われるわけだ。あまりにも面白いゲーム、というか、ほどよく次から次へと「やること」を投入してくるようなゲームを誰かが開発したら、きっとゲームは法的に規制されちゃうかも。
ようやく飽きてきたけれど、それでも800時間超、遊ばせてくれたのだから『ドラクエX』はだめなゲームではない。しかしたぶん、以下の感想にはネガティブな物言いが多くなってしまうと思う。だから最初に書いておこう。『ドラクエX』は良作だった。そして、2012年の8月と9月に限っては「神ゲー」だったと言ってもいい。

自分にとってもほぼ初めてのオンラインRPGだったし、おそらく大多数のプレイヤーにとってもそうだったのだろう。スタートした8月から9月にかけて、ゲーム内で渦巻いていた不思議な「熱気」を説明するにはそれが適切だと思う。
長年なじんできた「ドラクエ」という枠組みが、ネットのなかでオープンになり、現実世界のどこかにいる他のユーザーとパーティーを組んでボス敵を倒しにいく。その道中の会話ひとつひとつに、なんとも表現しがたい「弾む心」がこもっていたように感じた。
礼儀知らずで自己中心的な小学生プレイヤーの言動、挙動も笑えたし、しだいに形成されていく「隠語」めいたものをつぶさに観察できたのも楽しかった。前の記事で「マタメンテの呪文」と揶揄したけれど、それはそれで実害のない空襲警報みたいな感じで妙にハイな気分にしてくれたものだ。

「ものだ」と過去形で語ってしまう。
第一回のバージョンアップが10月の初旬にあった。そこで「………え?」となる。「バランスを取るため」という大義名分のもとに、いくつもの「修正」が施された。
私は内心「下方修正はしちゃいけないんじゃないかなぁ。絶対に」と思った。「おそらくこのゲームの運営側は『ドラクエドラクエらしくあるのは、そのよきバランスにあるのだ』と考えていて、その考えがちょいとユーザーの一部を置いてきぼりにしてるな」とも。
その後もちょくちょくと細かい修正が入る。
納得できるものもあれば、納得できないものもあった。
たぶん、どんなに理にかなった「修正」をしても、批判するユーザーは出てくるはずだ。それはわかっている。
しかし、批判を圧殺するのはよくないと思う。
具体的に言えば、このゲームのホームページに設置されている「提案広場」というコーナーだ。ユーザーからのさまざまな提案が書き込まれるコーナーなんだけれど、運営への批判を書き込むと「規約に違反しています」と削除される。どこがどう違反なのかは明示されない。
そこで2ちゃんねるのゲーム板ではすかさず「提案広場じゃなくて提案門広場じゃないか」と言われてしまった。中国で、人民軍が人民を弾圧した天安門広場事件に例えられてしまったわけだ。
私はゲーム作品をつくるつもりはないけれど、こうした一連の「迷走」とも思えるドラクエXでの出来事は、これからこのようなオンラインゲームを運営しようとしている人たちに、いくつかの教訓を与えていると思う。

●ユーザーライクということは、ユーザーの言う事をいちいち聞くことではない、ということ。提案は受けるべきだけれども、それらに振り回されてはいけない。運営はもっと黒子であるべきだ。耳を傾けるだけでいい。いい子ぶって対応する必要はさらさらない。
●ゲームは娯楽だ。だから絶対に下方修正(劣化)させてはならない。現状のドラクエはまるで「校則のやけに多い、礼儀正しいけれど、陰湿な雰囲気の学校」だ。これはいけない。というか、つまらん。破れ目を修復するのでなく、破れ目を積極的につくりだしていくのだ。そしてそれをワクワクするようなダイナミズムへと導くべきだろう。
●ゲーム内に経済を持ち込んだ(プレイヤーどうしのアイテムの売り買い)のに、それがデフレを起こしてうまく機能していない。この部分こそ積極介入して経済バランスをとらねばならないのに、手をこまねいているようにしか見えない。
●これまでのドラクエはあえて戦闘に緻密な戦略性を求めなかったが、今回のように戦闘から逃げることが簡単にできるのだから、戦略性の必要な戦闘を導入すべきだったと思う。そうでないと飽きる。

(追記/2012年12月19日)
もう数日で第二回の「大型」アップデートがある。
レベルの上限が現在の55から60に上がったりとか、新しい職業「魔法戦士」「スーパースター」が追加されたりとか、入るたびにかたちの変わるダンジョン(シレントルネコかい)が提供されたりとかするそうなんで、ちょっとやってみよう。それで飽きたらおそらく月額1000円の支払いを停止することになりそう。すでに『ドラゴンズフドグマ』を始めちゃっています。