山崎幹夫の各種センサー

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三日月バビロン『ヒューリスティック・ポケット』


演劇の公演はいつも公演終了後に感想を書くことになってしまうジレンマがあったので、それならいっそ次の公演が迫ってきてから書いくことにしようと思う。
というわけで三日月バビロンが7月に上演した『ヒューリスティック・ポケット』の感想。
これまで三日月少年→三日月バビロンで観てきた櫻木バビの書いた物語のなかでは、もっともケレン味の少ない、静的なお話。現実と非現実を自在に往来するアクロバティックな展開はないけれど、重厚につくられ、語られ、演じられた物語は、やはりいつものようにぐっとくる。
櫻木バビはいつものように「まだヨチヨチ歩きの劇団です」と言うけれど、役者さんたちからはいかにも熟してきた感触が伝わる。
とくに今夢子(添付画像右)の役者としての成熟ぶりははなはだしく目を惹いた。しばらく前から役者としての存在感が光っていたけれど、今回、まるで別人のような雰囲気を醸し出していることに驚かされた。
自分は記録映像を撮っているからある意味「中の人」なわけだけれど、現在、この劇団がいい感じの時期にきていると感じている。
いずれ再演されることもあるだろうから、お話しがネタバレになるようなことは書かないけれど、舞台になっているのは海辺にある古本屋。
添付画像のふたりが座っているのが、とても大きな本だ。もちろん、こんな大きな本があるわけでもなく、ふたりが小人であるという設定でもない。
自分には、これはこの作品が物語であることを自己強調しているように思えた。
そうだ、しょせんは物語、たかが物語。とてもうれしかったことも、とても悲しかったことも、記憶はいずれ薄れていく。そして、それを伝えていくばくかの時を経て残したり、あるいは普遍へと変換して癒したりすることができるのも物語がもっている力なのだ。
ということを舞台の最初から最後までを通して、指し示していたように思えた。

次の公演は今週です。12月7日(金)から9日(日)まで。タイトルは『over the citylight,under the MOON~月あかりの空庭~』。阿佐ヶ谷ザムザにて。
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