山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

『スバルの夜』はやはり一度きりの傑作


あまり記憶には残っていないショットかもしれないけれど、右書きの『スバルの夜』のタイトルの直後、暗闇にぼんやりと白っぽいものが見える。
カメラが近づいていくと、急に照明が当たったかのように明るくなり、それは少年の白いシャツだとわかる。
カメラはそのまま近づいていき、少年のうなじのあたりをアップで撮る。白いシャツが明るくにじむ。
エロチックなまでに鮮烈なショットだ。
言葉では説明できない。それまでにある映画でも見たことがないような、それでいて人の心を揺さぶる何ものかがここにある。
しかしこれは初回だけの、一回性の奇跡なのかもしれない。
事実、銀河画報社映画は、その後、洗練されていってしまう。
あまりにも濃密な何か。
目覚めてすぐの一時だけ残っている、生々しい夢の感触のようなもの。
こうしたものは映画づくりの経験を積むことでぬぐい去られてしまうものなのでしょうかね。
何回も書くようだけれど、腫れた想像力の産物は、腫れがおさまってしまうと再現不可能なのかも。
このブログを読む人の90%ぐらいはもう見ている作品だと思うけれど、残り10%の人はこの機会に見ておくといいっスよ。フィルムで見ないと魅力が減衰するから。