山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

『猫夜』を思い出す3


カメラをリョウとカーコに渡す。
リョウとカーコと書いたが、神岡猟のことはふだんは「神岡」と呼んでいたし、寺本恵子のことは「恵子さん」と呼んでいた。なぜカーコかと言うと、富山からやってきたちょいと飲んだ彼女の高校時代の友人が、恵子さんのことを「カーコ」と呼んだのが面白かったから「それ、いただき」。
あくまでリョウという呼び名、カーコという呼び名はこの映画限定の名前だ。そこらへん、まったく作為なく勝手に撮り進めたかのような『猫夜』だけれど、ベタな日常からは離れたいという私の「作為」がある。
しかしカメラを私たら、あとは任せるしかないと思っていた。たしかにじゃんじゃん使えない映像を撮られてきたら困るし無駄だ。でも、商業映画に費やされる金額からすれば微々たるものだ。それで、商業映画がどうあがいてもつくれない映画がつくれるのだからいいではないか、そう思ったのだった。
予想通り、カーコは自分の子どもであるカズくんばかり撮っている。リョウは私のうちに遊びにきて、酔っぱらうとカメラを取り出して回したりしていた(こら!暗くて撮れないぞ、もったいない)。
で、私はどうしましょう。
そのときふと思ったのがインドだった。カーコはインドにいったことがある。私はない。それがなぜか劣等感情めいたしこりを私の心のなかにつくっていた。ならば行こう。インド、ネパールをバックパッカーで旅してみよう。
この旅で出会ったものはたくさんありすぎるのだが、映画に取り込んだものはそのごく一部だ。そして、コトバでは表現できないような「おそらく一生忘れることのない光や風景」の片鱗はつかまえらえたと思う。
おそらくここがターニングポイントになるだろうという予感はあった。そこで、それまではシングル8で撮影していたのだが、インドの旅をきっかけに、3人ともスーパー8にカメラとフィルムを変更した。私は同時録音からアフレコへ。リョウとカーコはアフレコから同時録音へ。
(添付画像はインド撮影部分より、バラナシの路地)