山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

『バオバブ』クランクアップ


バオバブのけじめ』最終日。私の演じる主人公の父親役の男が、橋から川に飛び込むシーン。飛び込む橋と飛び込んでバシャバシャしている橋は別の場所。添付した写真は橋から飛び込むシーンを撮った場所。クリックして拡大すると、橋の下に段ボール箱を組み立てて美術部がつくった足場が見えるだろう。
『プ』では緒川たまきさんに、これよりもっと高い場所から飛び降りることを何のためらいもなく要求したっけ、と思い出す。いざ我が身になると、もちろん監督に要求される動きをこなそうという気持ちが第一だが、足をひねってねんざしたらどうしようと思ったりする。次のシーンは川から泳いではい出してくるところだから、足をひきずっていても不自然ではないから大丈夫だろうと考えたりしていた。
橋からこの段ボール箱のクッションに飛び降りることじだいは簡単なこと。しかしテストで飛び降りてみて、そこから下に降りるのが難しいことに気づいた。「脚立あります」とスタッフが持ってくるが、小さいものだし、「足をここに乗せてください」と手のひらを組んでくれるが、ホントに信頼できるのかわからない。佐藤浩市が「役者は自分のことは自分で守るしかないんだよ」と言っていたのを思い出す。相手はシロートなんだ、気持ちは一生懸命でも、経験値は少ないはずだ、そう頭によぎってしまったので「いい」と言って橋によじのぼった。
川へ飛び込んだあとのシーンは別の場所で撮影。この場所は私の作品『猫夜』でも1カット、橋からの見た目を撮影した場所だと気づく。そのときカメラを回した神岡猟はもうこの世にいない。同じ場所でふたたび映画の撮影に訪れるなんて、何かの縁があるのだろうか。
川にはクラゲがいる。「へえ、『アカルイミライ』みたいだね」とスタッフが言うが、こういう場合はそこに入る役者さんに気をつかって、「網とか棒でクラゲをよけましょう」と言うべき。この言葉が誰からも聞けなかったのは残念。まあ、こうしたコマゴマしたことは撮影中にいっぱいあったが、そこで細かく口出ししてしまうと、私の立場が「役者」から「指導教官」になってしまうので、それは避けたいところ。そうしてしまうと、役者として不慣れなところへの弁解になってしまうから。
さて、結果から言うと、着衣のまま泳ぐことがこれほどしんどいとは思わなかった。予想以上だった。おぼれた人を助けようとして飛び込んだ人まで溺れてしまうわけがよくわかった。衣服が水を吸って、きわめて身体が重くなる、動きもにぶくなる。泳ぐということは、手と足をおおいに動かす行為なので、ここに水を吸った布が全面的にまとわりついているわけだ。テイク2まで撮ったが、そこで完全に息が切れた。しばし座り込んで、ぜいぜい呼吸するしかなかった。川の水もちょっと飲んでしまった。しょっぱかった。やはり海が近い。
そんなふうに個人的に苦労したシーンではあるが、もしかしたら水の中でばしゃばしゃしているところはカットされるかもしれない。絶対必要なものではないと思うので。