山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

『バオバブ』6日目


京王線の電車内(許可をとり、使用料を払っての撮影)のあと、葛西のマンションへ。添付画像はそこでの撮影のようす。
ここは葛西の駅から徒歩で15分ぐらいかかる場所にある。スタッフに先導されて歩いていって「ここです」とそのマンションを指さされた時、その向こうの風景に見覚えがあることに気づいた。「!」。そこは、そうだ『無翼の朝と夜』を撮るために目的もなく東京のあちらこちらをうろついていた時に通った場所だ。帰宅して地図を見て間違いないことを確認できた。そのときは西葛西駅で降りて歩き始め、この場所を通過して一之江の駅からまだどこかへ向かったか、帰ったかだったはずだ。
バオバブ』の撮影の待ち時間のあいだ、たびたびあのときの気分がよみがえってくる。撮影は2003年の初夏から冬にかけてだった。あれは自分の心のレンズを砕いていくような、長く、つらい撮影行為だった。そのときの自分が、今もまだ亡霊のように8ミリカメラを持ってこのマンションのまわりをうろついているような気がした。
あの『無翼の朝と夜』で、自分は何を発見したのだろう。発見はなかったのかもしれない。ただ心のレンズを砕くという行為があっただけなのかもしれない。そうしないと先が見えてこなかったからだ。『無翼の朝と夜』で発見したのは、もう、後戻りはできないということかもしれない。いや、後戻りはできるだろう。できるけれど、しない。たとえ何が起ころうとも、8ミリカメラを手に、このまま進んでみなくてはならないという気分、それしかなかったのかもしれない。
バオバブのけじめ』の撮影はあと2日。明日はほぼ一日、このマンションでの室内シーンになる。