山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

三日月バビロン『アルカディアの夏』


昨年の『琥珀ノ宴』から半年、またしても新作が披露されました。
夏休みを間近にひかえた全寮制男子校が舞台。んもー、初夏の気候そのまま浮かれた気分のちょっと熱っぽい少年たちの妄想を妄想する物語。ネタばれになるからくわしくは書かない。
しかしながら思い返してみると、非現実な登場人物のうちに、未来から来たと示唆されるキャラがいたのはとてもうまいなぁ。過去の情熱的ななにかが、消えることなくまた物語上の「いま」をゆさぶるというだけでなく、それを観察するのか、いずれかかわることになるのか、未来からの登場人物がいるということが、時間軸の永遠性を簡潔だけれど的確に描き出している。パッションがただの残り火でなく、未来へと突き抜ける何かをはらんでいるというイメージがとてもいい。
そして今回、主役の木原春菜さんがさらに一皮むけた。
いや、毎回のようにこれまで見たことのない側面を見せてくれているのだけれど、記録撮影をしていて、今回は「あっ」と思った。
何か「あっ」と思ったかを記述することが難しいのだけれど「なにか、チロチロ燃えているようなものが見えたぞ」という感じ。
存在感のオーラはそもそもあった。それに加えて、エモーションの炎が点火したように思う。
舞台(演劇)で主演をやるということは、何かそこらの人とはちがうオーラを持っていることが必然だけれど、それに加えてエモーションの伝達力がなければ、そこで見ている人間の心と記憶に「焼き付く」ことはできない。
しかし、かつての三日月少年→三日月バビロンで主役であった伊東香穂里さんとは方向性が異なる。
伊東さんはとにかく「押し」だった。カキーンと押してくる。その潔さに観客が大喜びで押し出されて満足する。そんなタイプ。
どうやら木原さんはそうではなく、エモーションの炎で焼き、こんがりと観客をトーストするタイプのような。こっちの方がオーソドックスだな。
ああ、だからそんな木原さんの特質が最大限に発揮されるように、櫻木バビさんの台本もオーソドックスな感じになっているのかも。

添付画像は出演者、スタッフみんなの記念写真です。