山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

三日月バビロン『月あかりの空庭』


劇団三日月バビロンの次回公演『ファンタスマゴリア~海の回廊~』が5月3日から5日(阿佐ヶ谷ザムザ)に迫ってきたので、前回公演『月あかりの空庭』の感想を書くことにいたしましょう。
自分がこの公演で驚いたのは、空間造形のみごとさだった。
設定は「丘の上の教会の屋根裏部屋」だから、いつもより高い位置に足場を組み、屋根裏と、一階の高低差をつくっている。
主人公は破いた聖書のページで紙飛行機をつくり、それを丘の下の町へと飛ばす。
紙飛行機には、もうこの世にはいない人たちの魂の残存が乗り込み、あるいはこの世にいるけれど眠っている人が夢の中というかたちでそこにまぎれこんだりする。
この世にいる飛行機好きの少女によって放たれた紙飛行機が、夜の空間を頼りなく切り開きながらヨタヨタと町へと向って飛行していく。
それを観客がイメージするわけだけれど、ここで、少女たちの物語と、その紙飛行機に乗り込んだ魂たちの物語が、あまりにシンクロしてしまうと、観客の気持ちは物語の方へと引き寄せられてしまう。
それほどはシンクロしないで、ふたつの物語が奏でられることによって、あら不思議「丘の上の教会の屋根裏から、下に広がる何の変哲もない町」という空間が、そこにみごとに現出していく。
素晴らしい。
役者さんたちも円熟味をさらに増していて、この劇団が現在、油の乗った状態にあることが感じられた。主演の木原春菜が、最後の方で、しっかりと大人の表情を見せていたことも「おおっ」と思ったし、大学教師役の深澤寿美子はあまりにも役にぴったりなことにも驚いた。また「導き手」的な役回りになることも多い榎本淳が、この芝居では吹っ切れた役を演じていたのも爽快な驚きがあり、またいつも以上に輝いていたことも書き添えておきたい。

さて再演となる次回公演の『ファンタスマゴリア』では、8ミリ映像を使います。おそらくはこれが8ミリフィルムによる映像を新たにつくって使用する最後の機会になることかと思います。
また演出の櫻木バビさんから、前回は舞台上に置いて映写した8ミリ映写機を、今回は『福神町奇譚』のときのように、宙吊りにできないかとの提案がありました。可能かどうかはまだわからないけれど、挑戦してみましょうか。
予約や詳細などは劇団のHPを参照ください。