暗黒街は甘い香り(群馬県伊勢崎市再訪)
ふたたび群馬県伊勢崎市に行ってみた。
さびれた飲み屋の通りをぶらぶらし、何枚かの画像を撮り、ビデオも回してみたりした。
なぜ伊勢崎市に行ったかといえば、ここの出身であり、現在もこの町を本拠地としてWWSというプロレス興行をおこなっているミスター・ポーゴというプロレスラーがいて、そのポーゴが「伊勢崎を暗黒街にしてやる」と何度も発言したことがあったからだ。
それがどうした?と思うでしょう。
でもちょっと待った。
今どき「暗黒街」なんてことば、ないですよね。死語です。
だから「暗黒街にしてやる」という発言は、よくあるアナクロで、時代遅れの、悪役レスラーのすこし想像力に欠けた発言のようにも感じる。
でも、大事なところはここだ。
相手レスラーの出身地をばかにする意味で「暗黒街にしてやる」というのではない。暗黒街化を指定された町は、ほかならぬ自分の出身地じゃないか。
そう思ってみれば、ほら。
暗黒街というアナクロな言葉に、ファンタジー的な何かがまとわりついていることに気づく。
暗黒街……いいよな。
暴力とかドラッグのリアルで悲惨が側面ではなく、レトロチックな甘い衣に包まれて、くすんだ色あいのネオンサインだとか、もっとさかのぼってゆらゆら揺れる光のガス燈だとか(ガス燈なんて見たことあるのかよと突っ込むかもしれませんが、となりの小平市の東京ガス資料館外にある)そういう、胸にぎゅっと迫ってくるようなイメージが次から次へと喚起されませんか?
ミスター・ポーゴ。
本名は関川哲夫。
なぜポーゴかというと、海外での日本人レスラーがよくやるように、戦争にまつわる名前を名乗ろうとミスター東郷にしようとしたらしいんだけど、誤植されてTOGOがPOGOになってしまったということらしい。
このエピソード、いいでしょ。好きだわ。
レスラーとしては2流もいいところで、メジャー(全日本や新日本)での活躍はないと言ってもいい。
食い詰めレスラーが集った大仁田厚のFMWで、大仁田などとの凶器を使用したデスマッチで名を残しているのみ。
おもしろいことに「伊勢崎暗黒街化計画」なんて言っている人が、何を思ったのか2003年にその伊勢崎市の市議会議員選挙に立候補した。
なんと、父親が群馬県議会議員だったそうなので、そのコネみたいなものがあったのかもしれない。
けれども結果は落選。しかも26人の席を29人で争って、関川哲夫は最下位だそうで。
いま、調べてみたら、最下位当選した人は1387票。
関川哲夫はビリだったとは言え1059票獲得している。その時の選挙ポスターも画像検索するとすぐ見れる。けっこう大きく「ミスター・ポーゴ」と書いてあるのにねぇ。
ま、そんな経緯もあって一度は伊勢崎市の飲み屋通りを歩いてみたかったのです。