山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

予想外の新作『キリライダー』


レスラーとしてのミスター・ポーゴはあまり好きなレスラーではなかった、そのポーゴが自分の出身地に対して言い放った「暗黒街にしてやる」というフレーズは、妙に高揚をソソるものがあった。だから、そのファンタジーな言説を抱きながら群馬県伊勢崎市をうろついてみたい、という行動に結びついたわけだ。
自分のなかにあるファンタジーの構成要素にはないものを、ちょっとばかしムリヤリいただいて混ぜ合わせてみること。
失敗に終わるとしても、ファンタジーとファンタジーがぶつかり合い、それが現実世界にいくらかなりとも展開するとすれば、それはそれでドキドキできる。
こんど、11月末のラ・カメラで上映予定の新作『キリライダー』も、そんなふうに、自分のアタマのなかにはまったくなかった要素の短編映画だ。
タイトルからも予想がつくように、仮面ライダーごっこ遊び映画だ。演じているのはすべて中学一年生の女の子たち。
少女たちのごっこ遊びを、中年男がお手伝いしてマジメに映像にする。
……ではつまらない。
そこでこっそり赤バットを持たせてみた。画面の真ん中にあるでしょ。
これで、少女たちのごっこ遊びが、じつは『夜のてのひらの森』『赤バット娘』『もうすぐ夜がやってくる』の主人公であるルカニの夢の世界であるというふうに読めることになる。
悪の親玉少女の名はワルカー。
彼女がこの画面で左手に持っている「一味唐辛子の小瓶」は、正義の味方キリライダーにうどんを食べさせるためのトラップである。
つまり、ここは『夜のてのひらの森』の冒頭でちょろっとしゃべったまま放置されている、あの「森」なのだ。『夜のてのひらの森』のナレーションだとたったひとりの少女しか住んでいないように語っているけれど、百町森にはプーさんだけでなく、コプタやイーヨーなどがいるように、総計7人の少女がいて、こんなふうな「ごっこ遊び」をしている、というわけでどうだ。
というふうに強引なこじつけがムリヤリ展開して、しかしかたちになろうとしている。『もうすぐ夜がやってくる』のあとにすぐさま『水銀の心』で完結するのでなく、この『キリライダー』がはさまることで、いい構造になってくれていると思う。