山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

『吉原幸子詩集』『新選吉原幸子詩集』思潮社


23年ぐらいまえのこと。札幌に石造りの倉庫を市内のいろんな表現行為にかかわる団体で借りてフリースペースにした「駅裏8号倉庫」という場所があった。
そこで詩の朗読の催しが行われたのだが、最初、観客として参加しにいってみたら、運営委員が誰もいなかったので、運営側の人間としてその催しをお世話することになった。
ロビーで待機していると、暗がりから「タバコの火を貸してくれる?」と女性に声をかけられた。その年上の女性がとてもカッコよくて、ドキドキしてしまったのだった。若かったね、俺も。その女性は吉原幸子というそこそこ有名な詩人だということがわかり、私は翌日、札幌の旭屋書店にて、その朗読会のメインだった吉増剛造さんと、その吉原幸子さんの、思潮社から出ていたシリーズの本を買ったのだった。
原幸子さんはもう亡くなっている。いくつか、自分がこれまで引用したりしたものを書き連ねてみよう。

たとえば
キノコ雲 ができるのは
おそろしいことだが
もっとおそろしいのは
そのあとの青空だ
(「質問」)

目覚めて しばらくは
夢の出口を手でふさいでゐる
夢は 魚のようにはねてゐる
(「死に方について」)

雲が沈む
そばにゐてほしい
鳥が燃える
そばにゐてほしい
海が逃げる
そばにゐてほしい
(「日没」)