山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

澁澤龍彦が『黄金時代』で言う牢獄とは


阿佐ヶ谷美術専門学校での授業をする。昼休みにカメラのきむら新宿店に電話してみると、もう以前に納品した『8マニュ』はすべて売り切ったとのこと。授業を終えて新宿に向かい、精算を済ます。
新しい新宿店は讃岐うどんの「東京麺通団」の上にある。カメラマニアらしきおやじがチラホラ、ウインドウを覗き込んでいる。こんなふうな銀塩カメラマニアは、これからも存在し続けるだろう。しかし8ミリはどうなるか。
帰りの電車のなかで澁澤龍彦『黄金時代』を読む。河出文庫版90ページにこんな記述があった。

私は万国博にもアポロ11号にもさらに興味のもてない人間であるが、真に過渡期の時代の錯乱の表現者たるにふさわしい、何らかの牢獄に閉じこめられた哲学的知性の出現を、心から待望せずにはいられない。情報社会に生きる私たちの時代の牢獄とは、そもそも何か。
しかし、そういっても、現に活動している私たちの時代のすぐれた知性は、おそらく、次の世紀が幕をあけるまで、私たちの目には容易に見えないかくれた場所(それが牢獄だ)に、ひっそりと身みずから沈潜しているにちがいない。

これは予言じゃん。澁澤の言う「次の世紀」はとっくに幕を開けている。そして牢獄というのは、情報社会そのものだということがなんとなく了解されてきたはずだ。5年前だったら、私は「2ちゃんねるが澁澤の言う牢獄だ」とか言っていただろう。しかし2ちゃんねるは『電車男』ぐらいしか生んでいないように見える。
まだまだ沈潜は続くのかねぇ。