山崎幹夫の各種センサー

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大川戸洋介その3/蠅のカメラワーク


横光利一の掌編小説で『蠅』という作品がある。蠅の視点から人間たちに起こった悲劇を記述した小説だ。
大川戸洋介の「理に落ちない」映画を「これはいったい何なのだ」と考えているときに、ふと「これは蠅の主観のカメラワークなのかもな」と思ったのだった。
人間世界に生息して、人間たちにまとわりつきながら、べつに人間どもがどうなろうとかまわないで生きている。そんなカメラワーク。蠅は昆虫だから、おもな関心事は光だろう。
そう、大川戸の映画はやたらと光に反応する。沈みゆく太陽や、多摩川の川面に反射する光、家のなかに差し込んでくるさまざまな陽光のありさま。
添付画像は『夢主人』より。場所はぴあの映写室で、くつろいだ格好で座っているのは森永憲彦。外から差し込んだ光が森永に当たって、まるで光の玉を抱いているようにも見える。
べつに工夫がほどこされているわけではない。大川戸の使っているフジカZ450は、レンズ内部にカビが生えていて、それがソフトフォーカス効果をもたらしてこんなふうに光がにじむ。それだけのこと。
カビかぁ。
そうだ。8ミリカメラにはよくレンズにカビが生える。ビデオカメラではあまりそういう話は聞かないな。
8ミリカメラって、基本、湿っているのでしょうかね。