山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

映像のエロ表現その8/もの喰う女


無心においしいものを食べる若い女
すべてのアダルトビデオを見ることは誰にもできないことだけれど、たとえば援助交際ハメ撮りビデオなんかの冒頭で、ファミレスとかコンビニで買えるようなものを、素の表情で食べている女の顔のショットを撮れないものだろうか、と思う。
たとえそのあと、作業的な退屈なエッチシーンが続いたとしても、最初の方でそんな「もの喰う女」の無心な表情をとらえていたとしたら、たいぶちがうんじゃないか、と。
武田泰淳の掌編と言ってもいいほど短い小説で『物喰う女』というのがあります。
のちに妻となり、小説、エッセイでも業績のある武田百合子がモデルだと言われているんですけど、貧乏な女がデートのときに、うまそうにものを喰う姿が活写されています。
谷崎、川端、吉行などなど、とかくエロ表現は小説が突出してます。やはり妄想表現は文字がぴったりなのかも。
そんなズバリのエロ表現の傑作群からはちょいどはずれる位置にあるけれど、この『物喰う女』はいいとこ突いてる。
エロな気持ちがぐっとソソられていくときのポイントを突いていると思うのですよ。
だって「はい、どうぞ」といきなり大股広げられてもエロさはソソられないでしょ。そうじゃなくて、隣接領域から攻められたときに、びよんと盛り上がるわけでして。
そこがエロ表現とホラー表現の、根本的に異なるところでしょう。エロは隣接領域へと逃げようとする。逃げまくってしまうと、その表現を商売として成り立たせることが困難になってくる。アメリカのエロ表現と、日本のエロ表現が、現在、とても離れているのは、そんなところに要因のひとつがあるのでしょう。