山崎幹夫の各種センサー

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妄想は生産されている?(妄想の伝染その2)


図書館に行って目についた本を借りてきた。『乱造される心の病』(クリストファー・レーン/河出書房新社/2009)と『家屋と妄想の精神病理』(春日武彦/河出書房新社/2003)。
『乱造される心の病』の方は、たとえば以前は「とても内気な人」という形容で済んでいた人が、いまは「回避性パーソナリティー障害」と呼ばれるようになったような過程をジャーナリスティックにたどっている。
心の病は、その他の病を異なっているので、解決方法さえあれば、それは「病気」と認定されてしまうプロセス。そういうふうにしてしまったのは、もちろん、それで利益を得る会社や職種の人々による。
名付けることによって物語がはじまるように、心の病もまた、それを「病気」であると名付けて認定することによって、人間は自分をその「病気」のかたちへとアダプトしていくのだろう。
『家屋と妄想の精神病理』の方は、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』のように、天井裏に何者かが住みついているという妄想の実例を紹介しつつ、そのあたりの妄想のなかみをさぐっている本。
大切なところを引用する。
<妄想とは、誰もが心に内在させている「物語の胚珠」が、世俗性やキッチュさを取り込みつつ奇形な成長を遂げた産物である。それは精神の古層へと根を張っている。馬鹿げた実を結ばせつつ、根の先端は心の奥底をまさぐっている。だからこそ病者に接した人々は、遠く忘れ去った暗い記憶を触発されずにはいられない>
そしてこの本では「妄想の共有」についても実例を交えて触れている。やはり、妄想は伝染するようだ。