ボロアパートに住人は自分ひとりという妄想
仕事が終わり、直線距離で歩けば5分ほどで新高円寺の駅なのだけれど、大きく迂回して、今まで歩いたことのない道を歩いてみる。
ところどころに時代落ちした木造モルタルアパートがひっそりと湿って建っている。
写真はそんなうちのひとつ。郵便受けから想像がつくだろうけれど、もはや取り壊しを待つばかりといった風情のボロアパートの郵便受けに、ポスティングのチラシが押し込まれている。はみだしたチラシは雨に打たれて打ちひしがれているような、凶暴さを秘めているような感じ。
しかし、一部屋だけは住人がいるようだ。
そのことに気づくと、もう私はその住人になっていることを妄想している。
この妄想はしかし、少々甘美な味わいをもたらす。どうしようもなくそこに吹き溜まっているのではなく、わりと積極的にそこにいることを選択しているのだ。