山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

針生夏樹『DRAW』@初台ドアーズ


おぎわらまなぶさんの『二番目のしあわせ』を横浜まで観にいったときもそうだったけれど、たった一枚の写真に無性に惹かれて、どうしようもなくその映画を観なくてはならないという気分になることがある。
それはおそらく子どものころの体験からきている。
東村山にもひとつ映画館があった。昔の「街の映画館」だから、劇場の入口までにはちょっとしたアプローチ部分があって、そこにガラス窓で保護されて次や、そのさらに次に上映予定の作品のスチールが貼ってあった。それを見て、想像力をたくましくして楽しむという訓練をしてきたのだ。
さてそれで、添付写真。これにソソられた。
これは作者の母の若かりし時の姿だという。これを作品の冒頭につかうと、作者=針生夏樹の日記に書いてあったのだ。
美人じゃないですか。そして作者によく似ている。
作者が生まれた家は1959年、作者の生まれる1年前に建てられたという。その家を解体することになったので、家のなかの壁や外壁すべてにドローイングをしてしまい。さらに何人かの女性にボディペインティングをするという。その過程を記録して映画にするのだということ。
「?」。ま、よくわからんけれど、とにかく添付写真に惹かれてしまったので、本日、初台にあるライブハウスに行ってきた。初台なんて、このオペラシティが立つ前、まだそこが廃墟だったときに『ロビンソンの庭』のロケハンで訪ねて以来かもしれない。
そんなことはともかく。
作品は1時間20分ほどの長さ。
ダメでしたね。はずしました。作者=針生夏樹については、彼が大学生のときに撮った8ミリ作品を見ていて「こいつは監督には向いていないな」と思ったことがあるけれど、今回もそう。
なぜ実家なのかの説得力もなく。母と父の説明がちょろっとあるけれど、それが作品に生かされていない。ボディペインティングする女性が複数いるけれど、唐突に登場して、去っていくだけ。さらに野外に連れ出したりするけれど、それがかえって作品の印象を薄めているようだ。
じつに散漫で退屈な作品だった。
作者の父母はともに画家だったとのこと。
添付写真の母は「小紋章子」との作家名で絵や詩を発表していたらしい。が、google検索してみてもたいして出てこなかった。父親は針生鎮郎という名で、池田20世紀美術館で個展をおこなったことがあると作品中で紹介されている。それが画家としてどのくらいのランクになるのかは知らない。
作中、ひどくすべったギャグをやるシーンがある。ボディペインティングする女性の口にきゅうりをくわせさせ、尻にもきゅうりをはさんで「キュリー夫人で~す」なんて言っている。それを見て私は「ああ、そうか。こいつもヘボ詩人のひとりだ」と思ったのだった。