山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

カール・テホ・ドライヤー『奇跡』


本日は授業だったので、いろいろ参考上映の映像を選ぶ。
そのひとつがドライヤーの『奇跡」。いつもこういう古典的作品を参考上映しているわけではない。先週、田中登『(秘)色情めす市場』の冒頭(萩原朔美さんが塀にもたれているあたりまで)を見せて、あとはあれこれ解説していたのだけれど、つい口がすべって「これは聖なる映画スタイルの作品ですね」と言ってしまった。
そこで「では、王道的な聖なるスタイルとは何か」ということで『奇跡』のラスト10分ほどを見せることにしたというわけ。
そこで自分的には新たな発見があった。これ、死人が生き返えるというラストで、そのシンプルさがすばらしいのだけれど、これまで私はこのラストで、唐突に死人が生き返るのだと思い込んでいた。しかし、ヨハネが「さあ、生き返れ」と言う前に、死んだはずの女の「何か」に気づいている人がいたという描写があるのね。添付写真がそのカット。神父さんのとなりにいる人が見ているのは死んだ女性。その人が「!」という感じで身を乗り出している。微妙な描写だけれど、あきらかにヨハネの力によって生き返ったのではないということになる。
ま、それはともかく、もひとつ「うまいねぇ」と膝を打ったのは、台詞と衣擦れの音以外の効果音だ。生き返る手前の時点で、かすかに外にいる馬のいななきの音が入っている。そこから生き返って、止まった時計を再び動かしてその作動音がするまで、いっさい外部の音はない。かすかな馬のいななき音のタイミングが絶妙なポイントだとわかった。
こんなふうにこと細かに検証していくことは、かえって迷うことかもしれないけれど、たまにはいいでしょう。