山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

匂いで街を記述するような映画

家のとなりのアパートの脇にちいさな山椒の木がある。ふと目をやると葉っぱが一枚もない。丸裸状態だ。「おやおや」とよく見ると、アゲハチョウの幼虫がいる。こいつが食べ尽くしてしまったのだな。しかし葉っぱはもうない。幼虫は、よくみると表面がデコボコしている。「へぇ、やせたイモ虫なんて初めて見たな」と思ったわけだけれど、同時にあわれを感じてしまった。どこかに山椒の木はなかったか。そこに持っていってやればこいつは生き延びることができるだろう。
目を閉じて家の周辺の街にある樹木植物のことを思い出そうとする。しかしむずかしい。あちこちに山椒があるはずだけれど、それがマッピングされてはいない。しかし……。
そうだ、匂いを嗅いだことがある。家と駅の中間あたりだ。
山椒の匂いは強いから、かろうじて記憶のなかから拾い出すことができた。そこに幼虫を持っていき、枝のうえに乗せてやる。
それをきっかけに、あれこれと脳内でアイデアを探し始めた。犬がそうであるように、人間にも、匂いと記憶は密接に結びついている。だから見た目や地図とはまったく異なる、匂いの記憶によってつくられた街のかたちがあるはずだ。
匂いは映画にとっては超苦手分野だろう。しかし、だからこそおもしろい。難易度高すぎて実現の可能性は低いけれど、匂いによって記述された街を、どうにかして映像で見せるようなコンセプトの映画ができないだろうか。