山崎幹夫の各種センサー

8mmfilmの情報を提供&映像制作ノートとして始まったが、8mmfilmの死去で路上観察ブログになり、現在はイベント告知のみ

鈴木志郎康『風の積分』@neoneo坐


なんてったって7時間30分の8ミリ映画だ。そのうちの7時間20分ぐらいはまったく同じアングルで撮られている。ほぼずっとインターバル撮影で、雲が激しく流れる空が画面上半分。下半分は最初のうちは空き地で、やがて家が建つ。始まってから3時間ぐらいで家は完成してしまうので、あとは夜に灯りがついたり消えたりする以外の変化は見えない。
カメラは作者の家の3階の窓辺に設置され、南西を向いている。カメラはライキナ。それに魚眼レンズが装着されているので、画面は丸く四隅が縁取りされている。このカメラにはバルブ撮影の自動設定があるらしく(前に誰かに質問されたときに私は「バウアーじゃないっスかね」と答えたが、これでしたね、ライキナ)、夜はご親切にもバルブになったりする。
そうすると月がまるで白熱光を発しながら地球に落ちて行く人工衛星のようにも見える。明けの明星もはっきりその軌道が見える。
一気上映という史上初めての試みに参戦したのは20人ほど。これ以上多いと寝転んでみれなくなるぎりぎりの人数だった。
もちろん私は映写技師。なんとチラシにも、私が映写技師をすることが書き込まれている。チラシに作家本人ではない映写担当者の名が入っているなんて、かなり珍しいのではないか。フランスだったかの映画館では映写担当者の名札が館内に表示されいるところがあるというけれどね。それどまりでしょう。
最初の方はインターバル撮影の間隔もまちまちだったり、ナレーションが入っていたりしているが、後半はひたすら昼インターバル、夜ちょっとバルブで攻めてくる。このリズムが定着してからがいい。雲のダンスを楽しむのもよし、昭和から平成へと変ったその時期を思い出すもよし、もちろん幻覚系の楽しみ方も可能だ。私はちょっと眠くなってきた時に、映写技師は寝てはいけないので無理して目を見開いていたら、なんだかいろんなものが見えてきたぞ。