山崎幹夫の各種センサー

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『虚港』を思い出す4


添付写真、左は『極星』のもの、右は『虚港』のもの。同じ場所です。
『極星』でうっちゃってしまったまま、なおざりにされている「物語」というものへの対決が主題だ。なのでいくつもシンクロさせている。これはその一つ。『虚港』のこの墓場の場面でミニーが語っているものがたり「姉が東京に行ってうんぬん」は、『極星』では高層アパートの廊下でギターを弾きながら神岡猟が歌っていた歌詞の内容といっしょだ。
『極星』『猫夜』『虚港』の3作には、私以外に3人の人間が共通して出演している。
いちばんわかりやすいのは寺本和正(カズ)だろう。『猫夜』ではほとんど主演と言ってもいいぐらいだ。『猫夜』の最後は小学校1年生。ふいに登場してミニーとゲームに興じる『虚港』では中学2年生。身体の変化が一番激しいので、時間の経過をしっかり感じさせてくれる。spaceNEOでの上映の時はこの成長したカズの姿に観客の誰かが「おお」と声をもらしていましたな。
どの作品でもちょっとだけしか出て来ないのが川口善之くん。彼は私の作品では初期の『ターミナルビーチX』に主演した人物。その時に「このキャラはできるだけずっと自分の映画のなかにちょっとだけ出てもらいたい」と思ったので、しっかりと3作とも出演してもらった。まず『極星』では冒頭の破綻したドラマのなかで「あと5分ですべてがわかる」と言う男。『猫夜』では全国を上映してまわるシークエンスの最後、名古屋で会う男。そして『虚港』ではミニーの顔写真を見せて「知らない?」とたずねる相手だ。
もっともわかりにくいのは神岡猟。『極星』『猫夜』では全面的に登場する彼だが、『猫夜』でカメラを突き返して歩き去ってしまったきりだ。その彼は『虚港』のどこに出ているのか。答えは上の川口くんにミニーの写真を見せるシーンです。まず引いて撮ったショットで、駅前のようなところに川口くんが座っている。その時、手前をカメラに顔を向けながら通り過ぎる通行人、それが神岡なのです。わざわざこのカットの通行人での出演のために埼玉県蓮田市から神奈川県藤沢市(川口くんの住んでいるところ)まで来てもらったのだった、とは言いたいところだが『猫夜』の撮影のあと、彼は「もう映画にはつきあえない」と言ってるので「川口くんと飲もうぜ」と誘い出し、「通行人ならいいだろ」とムリヤリ出演させてしまったのだ。