山崎幹夫の各種センサー

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『虚港』を思い出す1


添付写真は後半部「ミニー」の写真を見せて「知ってます?」と問うシーンの前。とくに流れには関係なく、部屋のいつもの場所にいる私の演じる主人公が、テーブルの上でミッキーとミニーの人形をもてあそびながら「♪歩いても、歩いても、見知らぬ街で、これが東京ってものなのか♪」と鼻歌して、それから「ミニー、君の心臓の音を聞かせておくれ」とつぶやいてミッキー人形をミニー人形に重ねるところ。
これって『虚港』のなかで唯一、シナリオには記載されていないシーンなのです。たしか余尺(あまりフィルム)があったので、なんとなく「どこかで使えればいいや」と撮ったもの。それが編集を進めていくと、この前のシーンとこの後のシーンの間に、一息入れないとつながらないようになったので、これ幸いと入れたものだ。
『虚港』のなかには、見た人には強烈な印象として残っているはずの「6丁目6番地」探しなど、東京の面的な広がりを映像にしようという意図がいくつか込められている。しかしそれは主要なテーマではないので、ほのめかされるにとどまっているのだけれど、その後、『無翼の朝と夜』『眠る永遠主義』から全面展開されるテーマがすでにここで明示されているのです。
だからなんなんだと言われるかもしれないけれど、入れ子細工のように、その後の展開ってのはだいたいヒントが転がされているものなのです。ひとりの作家の作品を系統的に見ていると、そういうことが見えてくるのも映画の楽しさのひとつではありますよね。